下肢の手術

Posted on 24th 5月 2011 by admin

  • 股関節の手術:人工関節置換術、関節鏡手術
  • 神経支配:閉鎖神経,大腿神経,坐骨神経,上殿神経 Surg Radiol Anat. 1997;19(6):371-5. The sensory innervation of the hip joint–an anatomical study.
    LMAによる全身麻酔+硬膜外麻酔
    術後痛が強く、硬膜外麻酔または神経ブロックが必要です.神経ブロックでは腰神経叢と仙骨神経叢をブロックする必要があり,技術的に難易度が高く合併症のリスクも上がります.この手術には硬膜外麻酔を行っています.

  • 大腿骨近位部:大腿骨頚部骨折、人工骨頭
  • 神経支配:大腿神経が大部分を占めますが.一部閉鎖神経と坐骨神経が関与します
    LMAによる全身麻酔+腸骨筋膜下ブロック
    高齢者の大腿骨頚部骨折ORIFは腸骨筋膜下ブロックのみで十分な鎮痛効果が得られます.全身麻酔導入し,牽引ベッドで体位を取った後にブロックを施行しています.人工骨頭の場合は,腸骨筋膜下ブロックだけでは術後痛を完全にとることはできません.全身麻酔を行ってからブロックを行い,側臥位をとったあと脊椎麻酔を追加しています.腰椎の変形が高度で脊椎穿刺が難しい場合は無理をせず,術者にアナペインの局所浸潤麻酔を併用してもらいます.これで腸骨筋膜下ブロックだけでも乗り切ることができます.

  • 大腿骨骨幹部骨折
  • 神経支配:大腿神経が大部分を占めますが.一部閉鎖神経と坐骨神経が関与します.
    LMAによる全身麻酔+持続腸骨筋膜下ブロック(または持続大腿神経ブロック)
    骨幹部骨折では通常髄内釘が行われます.大腿神経のブロックのみで十分な鎮痛効果が得られます
    疼痛が強い骨折なので,ベッド移動は慎重に行います.まず全身麻酔導入し,術後鎮痛のため持続腸骨筋膜下ブロックを行います.術後は固定性がよいので,持続注入は24時間程度としています.

  • 大腿骨遠位部骨折
  • 神経支配:大腿神経が大部分を占めますが.一部閉鎖神経と坐骨神経が関与します.
    LMAによる全身麻酔+持続腸骨筋膜下ブロック(または持続大腿神経ブロック)
    高齢者の大腿骨顆上骨折にプレート固定が行われる場合は,大腿神経のブロックのみで充分な鎮痛効果がえられます.TKA後の骨折など骨移植を伴う複雑な手術では,侵襲が大きく,坐骨神経領域の鎮痛も必要となります.この場合は臀下部坐骨神経ブロックを追加するか硬膜外麻酔を選択します.

  • 膝関節の手術:人工関節置換術,ACL再建術、PCL再建術
  • 神経支配:大腿神経,坐骨神経,閉鎖神経ですが,膝関節の術後疼痛には大腿神経の関与が大きいとされています.
    LMAによる全身麻酔+持続腸骨筋膜下ブロック(または持続大腿神経ブロック)+臀下部坐骨神経ブロック
    これらの手術はターニケット時間が長く,術後疼痛が高度です.硬膜外麻酔,脊椎麻酔+持続大腿神経ブロック,持続大腿神経ブロック+膝窩部または臀下部坐骨神経ブロックなどいくつか方法がありますが,術後鎮痛という点では上記が最も良い印象です.
    大腿神経ブロック単独では膝の後ろ側の痛みが残ります.膝窩部坐骨神経ブロックは術後痛に有効ですが,術中ターニケットによる血圧上昇のコントロールが難しいです.臀下部で行うことでだいぶ緩和されます.
    臀下部坐骨神経ブロックは神経が深いところに位置するので技術的に難しいのが難点です.
    ACL再建術は10代から20代と若年者に多く,エコーによる神経の描出は比較的容易ですが,TKAの場合は高齢女性が多く,臀下部坐骨神経が明瞭に描出できず,ブロックが難しいケースがあります.神経刺激を併用することでブロックできることが多いのですが,無理をせず,腰椎麻酔+持続腸骨筋膜下ブロックや硬膜外麻酔で代用してもよいと思います.腰椎麻酔では麻酔が切れた時に痛みが出現するので,追加鎮痛薬(通常NSAID)が必要となりますが,許容範囲と考えています.持続注入は48時間です.

  • 膝の関節鏡:半月板切除,縫合,ドリリングなど
  • 比較的短時間の手術で,侵襲も大きくありませんが,全身麻酔だけではそれなりの術後疼痛が伴います.大腿神経をブロックすることでほぼ痛みはなくなります.
    LMAによる全身麻酔+腸骨筋膜下ブロック(または大腿神経ブロック)
    関節内局麻薬注入(0.375%アナペイン20ml)でも良好な鎮痛効果がえられますが,ドリリングでは局所麻酔薬中毒の報告があります.
    Possible bupivacaine toxicity after intraarticular injection for postarthroscopic analgesia of the knee: implications of the surgical procedure. Anesth Analg. 2002 Apr;94(4):1010-3

  • 膝蓋骨骨折
  • 神経支配:大腿神経
    LMAによる全身麻酔+腸骨筋膜下ブロック(または大腿神経ブロック)
    全身麻酔導入後にシングルショットの腸骨筋膜下ブロックを行うことで,良好な術後鎮痛が得られます.

  • 脛骨近位部骨折
  • 神経支配:下腿骨は脛骨神経が大部分を支配.近位端の外側部分を総腓骨神経,内側部分を大腿神経が支配.
    顆間隆起骨折など関節鏡下に完了する手術では,大腿神経のブロックのみで充分な術後鎮痛効果が得られますが,その他の脛骨高原骨折,関節外骨折などでは加えて,坐骨神経ブロックが必要です.いずれもシングルショットで充分です.
    LMAによる全身麻酔+腸骨筋膜下ブロック(または大腿神経ブロック)+膝窩部坐骨神経ブロック

  • 脛骨骨幹部骨折
  • 髄内釘は膝下から挿入されるので,大腿神経ブロックを併用します.疼痛の主体は脛骨神経が関与します.坐骨神経ブロックは比較的長時間有効なので,シングルショットで十分です.
    LMAによる全身麻酔+腸骨筋膜下ブロック(または大腿神経ブロック)+膝窩部坐骨神経ブロック

  • 足関節の手術:関節鏡手術(関節ねずみなど),内果,外果の骨折,かかとの骨折手術
  • 神経支配:足関節は脛骨神経で大部分を支配.一部総腓骨神経が関与
    LMAによる全身麻酔+膝窩部坐骨神経ブロック(+伏在神経ブロック)
    関節鏡手術は,全身麻酔+関節内局麻薬注入(0.375%アナペイン10ml),内果,外果の単独骨折手術は全身麻酔+局所浸潤麻酔(0.375%アナペイン)で行うこともありますが,三果骨折など複雑なもの,距骨や踵骨骨折ではブロックを行っています.伏在神経ブロックは局所浸潤麻酔で代用できるので,最近はあまり行っていません.膝窩部坐骨神経ブロックのみで良好な鎮痛効果が得られます. 

  • 足趾の手術
  • LMAによる全身麻酔+アンクルブロック(0.375%アナペイン10-15ml)
    外反母趾や足趾切断など疼痛が強い手術では全身麻酔導入後にアンクルブロックを行っています.