膝窩部坐骨神経ブロック

Posted on 28th 5月 2011 by admin

膝窩部坐骨神経ブロック(以下PNB)は膝から下,特に脛骨骨折や足首,かかとの骨折手術に有効です.これができると,足関節周辺の手術に腰椎麻酔や硬膜外麻酔を行わなくてすみます.下腿内側は伏在神経支配ですが,ここは局所浸潤麻酔の併用でのりきることができます.

PNBは,神経刺激法で行った場合,約66%で神経内注入になっていたとの報告があります.

Intraneural injection during nerve stimulator-guided sciatic nerve block at the popliteal fossa. Br J Anaesth. 2009 Jun;102(6):855-61.

また,意図的に神経内注入を行った報告もあります.

Intraneural injection with low-current stimulation during popliteal sciatic nerve block. Anesth Analg. 2009 Aug;109(2):673-7.

いずれの報告でも神経損傷などの合併症は皆無です.PNBでは神経内注入となっても,ほとんど問題ないのかもしれません.0.375%アナペイン20mlでブロック後,足首以下はほとんど動かせず,下腿の知覚低下が24時間以上(最大33時間)続いたケースを経験しています.ブロック施行時にparesthesiaや注入時抵抗はなく,術後の経過は良好ですが,下腿の感覚が回復するまで若干気になります.これらは,一部神経内注入になったのかもしれません.極力神経内注入にならないようなるべく神経にコンタクトさせず,周囲に局麻薬を浸潤するように行うと,術直後もある程度,足首以下を動かすことができ,下腿の感覚は24時間後にはほぼ回復していることが多いです.それでも,他の神経ブロックよりは長時間効果が持続します.

穿刺針:22G 10cmのブロック針

薬剤:0.375%アナペイン20ml

鎮痛効果:12-24時間

適応:PNB単独では距骨,踵骨,足首の骨接手術.大腿神経ブロックと併用してTKA,ACL再建,脛骨の近位部,骨幹部の骨折手術に用いています.

方法:脛骨高原骨折や骨幹部骨折ではシーネ固定が膝上まできていることがあるので,ブロックに支障ある場合は,術前に術者と相談しておくのがよいです.仰臥位でも可能ですが,下からプローべを支えながら針先をコントロールするのは意外とむつかしいです.最近では,体位変換可能な場合はほとんど下図のように側臥位で行っています.反対の下肢は膝を軽く曲げ,枕を挟んでブロックする下肢は軽く伸ばしておきます.この体位だと針先の描出は良好で針の操作も比較的容易です.

はじめに膝窩溝にプローべをあて,膝窩動静脈と脛骨神経を確認します.ここでは神経が皮膚のすぐ下にあり,その下に静脈,さらにその下に動脈があります.

プローべを5-10cm中枢側にゆっくり平行移動しながら,脛骨神経と総腓骨神経が合流したところで,プローべの延長線上で大腿外側の穿刺予定部位にマークします.穿刺は大腿二頭筋長頭の腱と腸脛靭帯を避け,その中間くらいになります.消毒行い,プローべをあてながら,マークしたところから皮下,大腿筋膜,二頭筋短頭内まで十分に局麻をします.ついで二頭筋短頭内までブロック針を進め,エコーで針先が見えるように調整したら,神経の下側の接線方向(6時方向)に針を進めます.脛骨神経側も含めて神経下側に局麻を浸潤させます.ついで,針を少し引き抜き,今度は神経の上側の接線方向(12時方向)に向けて針を進め,同様に薬液を注入します.神経が下方に圧排されますが,脛骨神経側にも薬液が届くように針先を調整してさらに薬液を注入します.

細身の男性では,大腿二頭筋との間に脂肪組織が少なく坐骨神経がややわかりずらいですが,下図のように二頭筋の内側に接して走行しているはずです.

ブロック後は周囲に局麻薬が浸潤してコントラストがはっきりします.

皮下脂肪の多い場合は,坐骨神経周囲にも脂肪が多く,神経がわかりやすいです.

若いスポーツ選手などでは.発達したハムストリングに圧迫されて坐骨神経が縦に細長く見えます.

下のように神経の上から薬液投与を開始した場合,神経が下方に圧排され,深く沈み込むので,その後に下側に針をすすめるのがややむつかしくなります.針先の描出が不十分な動画です.

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神経の下から薬液投与を開始した場合,神経はやや上方に多少圧排されますが,上側に針を進めるのはむつかしくありませんので,こちらの手順がよいようです.

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