腸骨筋膜下ブロック

Posted on 24th 5月 2011 by admin

鼠径部で腸骨筋膜下に局所麻酔薬を注入するコンパートメントブロックで、薬液は腸骨筋膜下を広がり,主に大腿神経がブロックされます.
周囲に重要臓器がなく、神経からやや離れたところに薬液を注入するので,神経損傷のリスクは低いと考え,全身麻酔下で施行しています。針先の描出は容易で超音波ガイド下ブロックでは最もやさしいブロックと思います。臨床上は大変有用で,大腿骨頚部骨折や膝関節鏡手術の術後痛に十分な効果があります.腸骨筋膜下に注入すれば、多少、筋肉内に注入しても十分に有効ですが,大腿筋膜と腸骨筋膜の間に注入すると効果がありません.

穿刺針:23G 5cmのブロック針

薬剤:0.375%アナペイン20ml

鎮痛効果:12時間

適応:大腿骨頚部骨折の手術、膝の関節鏡手術(半月板切除、縫合など)

方法:

触診で上前腸骨棘と大腿動脈を確認、マークします.

両者の中間点で鼠径溝を中心に直行するようにリニアプローベを当てます.

深さ3-4cmくらいのところに腸骨と大腿骨頭が確認できます.その上に大腿直筋の腱が高エコー性(白く)見え,さらにその上に腸骨筋が低エコー性見えます.これを覆う腸骨筋膜が深さ1cm前後のところに線状に見えます.

平行法で末梢側から針を進め,エコーで確認しながら,大腿筋膜,ついで腸骨筋膜を貫きます.大腿筋膜は気がつかないうちに破っていることもありますが,腸骨筋膜は針先のクリックを感じてください.吸引の後、局所麻酔薬を注入します.このときプローべを強く圧迫すると中枢側に薬液が広がりにくくなるので軽めに当てておきます.筋膜下を三日月状(中枢側に向かって背側にカーブしていきます)に薬液が広がっていきます。術後に皮膚知覚を確認したところ,上記の薬液量で確実にブロックされるのは,大腿神経で,外側大腿皮神経はブロックされないことが多いようです.
NeuraxiomUSRAで紹介されているように,鼠径靭帯を超えてより中枢側に薬液を到達させると,外側大腿皮神経もブロックされるようですが,術後痛には大腿神経がブロックされていれば十分な鎮痛効果が得られる印象があります.ACL再建やTKAに用いた報告では,大腿神経ブロックと同様の鎮痛効果があったと報告されています.
Comparison of femoral nerve block and fascia iliaca block for analgesia following reconstructive knee surgery in adolescents. J Clin Anesth. 2010 Jun;22(4):256-9.

Femoral nerve block vs fascia iliaca block for total knee arthroplasty postoperative pain control: a prospective, randomized controlled trial. J Arthroplasty. 2010 Dec;25(8):1246-9. Epub 2010 Feb 23.

注意点:プローベの位置が末梢側よりであったり筋肉の発達した若年者などでは縫工筋が穿刺部の視界に入ってくることがあります.この場合,縫工筋の上が大腿筋膜,下が腸骨筋膜です.筋萎縮の高度な高齢者では腸骨筋膜がわかりづらいことがあります.鼠径溝に平行にプローべを置いて、大腿動脈、大腿神経を確認し、大腿神経の直上から外側に伸びる腸骨筋膜を確認してから,プローべを90度回転させます.大腿筋膜と腸骨筋膜のあいだに針があると,薬液は水平に拡がっていきます.

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FICB施行前の大腿神経です.神経は明瞭ではありません.

FICB施行直後に再度確認すると,大腿神経周囲に局所麻酔薬が浸潤している様子が観察され,まるで大腿神経ブロック後のようです.